背戸川浄化実験5年間の経過

場  所 和歌山県田辺市背戸川 
 流域面積60ヘクタール。浄化対象流域44ヘクタール。 
 世帯数1400戸。人口4200人。1991年10月現在。
背戸川 原水は都市下水(川ではなく、下水道というイメージの方が正解かも)。流量2000トン/日
問題点1 悪臭・下水臭。 特に夏場は周辺住民は窓を開けられない。
問題点2 ヘドロが堆積し川底を押し上げている。(約25cm) 浚渫費用はかかるし、処分方法も問題多い。
問題点3 背戸川には生物がほとんど住めない。鳥も寄りつかない。 背戸川が流入する田辺湾には魚が寄りつかない。
問題点4 予算がない。広域下水道を作れば解決するが何百/何千億円かかるか分からない。

対策/浄化方法 

事業名 背戸川排水路水質浄化対策事業
事業主体 和歌山県田辺市
浄化方法 バクテリア等を利用した浄化方式
平成10年無気泡溶存酸素富加装置設置
システム概略図はこちら
開始日 1991年(平成3年)10月22日
初期費用 初期設備・土木工事等・・・・約1千万円 (本来的にはもう少しましな設備をしたかったが、予算の上限が1千万円であった。これは公共下水道の新設する場合の調査費用にも満たない金額。)
維持費用 一戸あたり約7円/日。(ご参考:公共下水道は一戸あたり約166円/日)

経過/浄化過程

1992年4月30日付  紀州新報「ヘドロ、悪臭軽減」と報じる。

長年清掃活動を続けている地元の方のコメント。「以前と比べるとヘドロが少なくなったのが一番大きな変化。においについても、冬場の温度が低いこともあるが、ヘドロの減少とともににおわなくなってきた。また、排水路の両岸に付着物がつかなくなってきた。」
1992年5月31日付  朝日新聞「背戸川からヘドロが消えた!」 投与4カ月でヤゴ と報じる。

「ヘドロが4カ月で消え、トンボの幼虫ヤゴがよみがえった」

1994年12月14日付  田辺市役所よりの手紙「田辺湾に魚が戻ってきた」!!!
「こちらの釣り人等からの話では、会津川口・湾内において 学名:ヘダイ(海津)という魚がよく釣れているということであります。 昭和40年頃まではつれていたが、それ以降つれてなく、昨年あたりから本年は会津川河口・田辺湾内・地磯においてよく釣れだしている、近年にない珍しい状態から、漁師の話では、最近海がきれいになり、ヘダイの餌となる海草が繁殖しだしたのではないかといわれています。 このヘダイは、海水等の状態がよい状態でなければ棲まないと言われているものだそうです。 これらのことから、田辺湾に注ぎ込む背戸川が数値では表せないものがあるのではないかと思われます。」

1996年12月10日 現在

<<継続中>>

Data(平成9年版 田辺市 環境白書より)

水質調査結果 まとめ PDFファイルを閲覧
水質調査結果 データ(調査地点別) PDFファイルを閲覧
水質調査結果 データ(調査地点別・月別平均表) PDFファイルを閲覧

 

  当初半年間の予定で始まった背戸川浄化実験は1年後から効果を認められ、市の事業として現在でも継続中です。試験的にシステムを停止してみますと再び悪臭が漂うことも実証済みです。 この背戸川浄化実験に用いた自然生態系の摂理に準じた処方と私どもの微生物などの各資材が高く評価いただいた結果だと思っております。
 何よりうれしかったのは実験当初「千手先を呼んで今ここでバクテリア等を投与するのだ。 1日5cmずつかも知らないがやがて田辺湾まできれいになってゆく。」と、当時としては大風呂敷ということにしか受けとめられていなかった発言がこうして証明されたことです。 小さな小さな実験ですが、私達の役目である環境を改善し、永続可能な状態にするほんの小さな役割をすこしでも達成できているのではないかと考えています。
 5年間の水質分析のデータは田辺市役所の歴代のご担当者のたぐい希なる尽力によって収集され続けられたものです。 それが仕事といえばそうなのですが、雨の日、風の日、厳寒の日、川の中に入って作業するのは大変なことです。 この実験が成功し、事業に昇格し、湾に魚を呼び戻した一因は市の担当者とその方々を支えた周囲の方々の想いもあることでしょう。
 この方式は「田辺市方式」と名付けました。 費用も安く、効果は絶大です。日本各地には広域下水道を設置できないところや設置するには費用のかかりすぎるところなどは数多くあることでしょう。田辺市方式を採用すれば必ずや環境保全に役立つものと確信しています。

冊子販売いたします

「背戸川排水路水質浄化対策事業~その技術概要と成果の報告~」(1998年改訂版)B5版67ページ

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